2005.6号

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「Shanghi Tex」から見た対中輸出の懸念材料と今後

反日感情薄れたが見学者減少、対欧米数量規制と人民元切上げの心配


 6月3日から5日間、隔年毎に開催される上海テックス(国際繊維機器展)は日本から約32社、欧州や韓台などから約80社が参加しての開催だったが、心配された“半日デモ”更に“欧米による繊維製品輸入数量規制”の影響は少しはあったようだが、表面的には平穏のうちに閉幕したようだ。機器メーカーと取引きのある関係見学者は(ユーザーや日欧向け部品下請業者)むしろ「まさか上海で反日デモが起こるとは予期しなかった」「欧米向製品の輸出規制は甘受せざるを得ないだろう」「人民元切上げは覚悟しているが、今すぐ実施とは中国の繊維や雑貨など軽工業者は考えていない。多くの経営幹部たちの大半は年内の切上げはない。来春以降での話なら分かる。それも切上げ幅はせいぜい3〜5%、北京オリンピックまでに8〜10%程度ではないかと予想している」「5%までなら合理化によるコスト削減と製品に付加価値をつけることで対応可能だ」というのが、大方の一致した彼等の予想する範囲だったようだ。
 とはいえ、出展者の大半は「中国側も、また海外からの外資導入は、こと繊維に限ってみれば昨年から減少か一段落しつつあり、一方で設備・生産過剰といった現象が表面化しつつあり、元切上げ予想と輸出規制、金融引締め、原油や鉄鋼などの基礎物資・原材料の高騰などなど、数え上げれば先行き不安視するのもムベなるかな」と考えている。かといって商談が全く絶えてしまったわけではない。中国は今でも最新鋭機械、最先端技術装置を求めており、一方で製品の多様・高品質化を目指しており、他方、タイヤコードやスパンボンド、ガラス繊維や2軸延伸フィルム(特にICプリント基盤用)それに炭素繊維など特殊産資への導入意欲が強いといわれる。但し、こうした技術や設備を先進国側が簡単に中国や途上国に売るとは考えられない。たとえ合弁方式でも、また直接投資でも、国内規制の多い現地での生産はまずムリだろう。それにこれらの分野は労働集約産業ではないうえ、中国内の需要もまだ高くない。むしろデメリットの方が大きいというわけだ。それ故に、関連設備機械メーカーにとっては、中国などアジア市場より日欧米への売込みが中心となる。
 ともあれ、産資向けといっても農業・土木建築用、ベルトやテープ用基布、ロープや漁網用といった普及商品ならともかく(すでに中国製プラントがアセアン諸国や中南米、中東アフリカ等に輸出されつつある)前出の例えば炭素繊維や超強力糸、例えばケブラーや帝人のテクノーラ、ポリエチレン糸などは日米欧でしか生産されておらず、中韓台それぞれから一時は合弁話もあったものの、今では中国との兼ね合い、駆け引きもあり断念したようだ。
 当面、中国向け一般繊維機械の輸出は低迷するだろうが、日欧の出展社が上海で得た感触では「中国の高性能・高品質に対する指向は全く衰えておらず、人民元切上げ後には再び産資向けも含めて70〜80%は回復するだろう」と期待を込めて口々に語っていたようだ。しかし日台香3国の繊維取扱い商社員などは「GDP最低7%を維持する必要から、オリンピックまではさほどの引き締めはない。繊維大手は設備更新で品質向上安定を、中堅は量も質もと強気で拡大路線をとるだろう。ただ資金・技術力のないところや小規模のところは苦しいどころか消えていくところが多くなる。不況でこれ以上の失業者を出さないためにも、政府や金融もテコ入れするだろう」と、やや楽観的見通しをたてていたことも伝えておこう。

以上