2005.3

 特集
<連載>

'05年の繊維機械世界市場を探る(下)


 日本のGDPの約13%が輸出でもたらされたもの。繊維機械生産の約86%が海外市場向けである。繊維製品の国内消費に占める輸出割合はついに60%前後に達した。
 
 日本の景気は年の前半は足踏み、後半は上向くと予測する政府や財界だが、それも米中両国の成長が持続するという条件つき。まさに他国だのみの景気見通し。

 中国の商務省がこのほど発表の'04年の外国企業の対中直接投資は4年連続で最高となり、対前年比13.3%増の606.3億ドルに達した。対中投資1位香港2位英領バージン諸島(多分、欧米やシンガポールなどからの中継またはダミー投資だろう)3位に韓国、そして日本、台湾の順。日本の対中投資は自動車以外はほぼ終息?それとも"人治・規制"のせい?それでも自動車やIT関連部品製造の各下請工場の現地進出がとって代わりそう。

 とうとう中国の化合繊生産量が世界シェアの4割を超えた(日本化繊協会の推測値)うちポリ長は49.2%と急増。2位の台湾は9.6%、3位米国の8.4%、日本3.1%と韓国はますますヤセ細り状況。まあ儲かりそうな原糸と商品に特化しましょうよ。中国発の津波はまず近隣諸国そして米や東南ア諸国はもとよりロシアや東欧、生産国のトルコやパキスタンも輸出市場を喰われているとして警戒の最中。

 1970年米ドルに対して円は360円、中国人民元155円。1990年プラザ合意後4年半の円は140円、人民元40円。そしていま円105円、人民元は対円で14円。米ドルは弱くなって双子の赤字で苦しみ、中国はいまや世界第2の外貨保有。靖国より為替レートの"歴史認識"を米中両国は考えてよ!!


http://www.muratec.net/jp


三つ巴か三すくみか日欧中の繊機メーカー、アジア市場で熾烈な争いはじまるか

 編集部(以下、編と省略) 中国向け繊維機械輸出は昨年夏前ごろから急速にしぼんでしまった。とくに年々30%前後(対前年比)と急伸してきたポリエスFプラントの新増設規制措置と金融貸出抑制がモロに響いた。
 昨年の対中統計は春過ぎにならないと分からないが、大手メーカーや取扱い商社による感覚からは、恐らく対前年比で30%減、機種によっては60%、70%減もある。目下の受注残からみると、今年は恐らく更に20〜30%方は落ち込むだろうと予想されている。

 記者(記と省略) しかし中国内の設備投資は合繊を除いてさほど落ち込んでいない。織機やニット機械は台数からみるかぎり5〜10%程度の落ち込みでとどまっているようだ。特にWJLといったフィラメント製織向けが依然好調だという。そのワケは、合繊プラントの新増設分が次々と操業に入り、原糸をさばくために製織業者に手元の資金を貸出して設備を拡充させているのだという。それも日欧や国内プラントメーカーへの決済資金を川中業者に融資し、これら大口債権社への支払を引き伸ばしてきたという事情も分かってきた。
 編織業者にとっては、仕事はくれるは、銀行融資を削られた分は川上の親方が仕事も含めて面倒を見てくれるとなれば、銀行より高い金利でも設備投資に踏みきるよ。まるで好景気時の日本の北陸産地の状況、すなわち合繊メーカーが傘下の機屋、また産元商社を通じて孫請けと信用や業務保障することで台数を増やさせていったことが中国でみられるようになってきた。

  日欧からの輸入機は円高ユーロ高のうえ、中国や韓国製の安いものに流れている。中には日欧製の半値以下というものもある。部品精度は数段落ちるものの、性能もそこそこ向上して結構使えるという。要するに代替機が急速に伸びてきたということだ。
 中国製が急増したウラにはハッキリいって「コピー技術の向上」があったと云われている。今では合繊プラントから原糸の各種加工機、更にWJLやドビー機、染色仕上装置に至るまで、すべて国産で製作できるまでになっている。精度性能もある程度までに達していることも急伸の理由だ。

  昨年10月のインド・ムンバイでの国際展に地元インドをはじめ日欧の各メーカーも同国の繊維工業の成長が期待できるとみて多数社参加したが、中でも目を引いたのが中国からの展示参加が目立ったことだった。
 現地での売込みにいちばん積極的だったのが中国勢だったと日欧の担当者は目を見張っていたようだ。中でもインドで国産化が遅れているポリ長プラントのいくつかをすでに成約していたことに驚いたという。値段もさることながら、設備内容も性能、生産性もそこそこのレベルのものだと知って「強敵現れる」と日欧有力メーカーが互いに話し合っていたそうだよ。

  中国もいよいよ国際市場に参加してきたということか。中国故事でいう"三国時代"の到来かも知れない。もっとも勝ち残って統一するのは一国のみだが、いま国際市場を席巻するだけの国も企業も当面あり得ない。一品種一機種だけならシェア70%以上というのはバブル崩壊後に競合相手が淘汰された結果だ。欧州では国境を越えてグループ化された。

  これからの10年は日欧中の「三つ巴」というか、あるいは需要が低迷して技術革新が足踏みすれば「三すくみ」が続くかも知れない。単に「高性能・高生産か」「大量生産向け低価格機か」といった論議も、いずれ世界最大の繊維生産および製品輸出国である中国の業界当事者の間から大勢の声として出てくるのではないか。
 いずれにせよ、繊維設備への更新需要がほぼ一巡しつつある現状を今一度詳しく調査分析して、今後の対応策を各機械メーカー毎ではなく、繊機業界全体で検討する必要がありはしないか。これらをまとめるのが日本繊維機械協会だが、会員脱退がバブル崩壊後より相次ぎ、どうも活気を失っているように見えて仕方ない。アジア金融危機をしのいで以降(このとき大量の不良債権が各国で発生した)たまたま対中輸出が増大し、WTO加盟がこれに拍車をかけた。欧州の大手機械グループの市場分析によると「今後北京オリンピックまでは、繊維設備投資は年々3.5〜5%の対前年伸び率が期待できる」としている。これは昨年の北京国際繊維産業展を中心に機械需要見通しについてのレポートのまとめだ。


 http://www.tmt-mc.jp/


  中国やインドの設備投資の"ブームサイクル"は中国が5〜6年毎に、インドは7〜8年毎とされてきた。ブーム時の伸び率や規模はその時々によって異なるが、中国で対前年比4〜6%、インドは3〜4%程度と、過去の統計からの分析結果分かってきた。とするとインドはこれから低率ながら上昇を続け、中国はほぼ横這いということになりはしないか。少々悲観的な見方だが--

  だからこそ昨年来、折に触れて「中印だけでなく、いまのうちにトルコ、メキシコ、ブラジル、そしてアセアン諸国の今一度の洗い直しと更新需要喚起」を呼びかけてきた。しかしこれらの市場においても、日韓台と欧州勢との二大勢力だけでなく、新たに中国、更にインド勢も加わった"三つ巴の商戦"が熾烈を増すことだろう。確かに安価な中国製が有利と予想されるが、しかし一方で「製品の消費市場と物流ノウハウ、さらに重要な金融・信用供与」が市場獲得のカギを握っているといって過言ではないと思うよ。もちろん為替リスクや金利変動も考える必要があるが、他方、アセアン諸国で繊維や物流を握っている華僑系の人達、かつてチベットや宗教問題で対立したインドの国民は、潜在的に中国の政治的システムと商取引の信用性を毛嫌いする向きが多いといわれ、さらに併合された香港の金融マフィアや専門商社のあこぎな商売に対して警戒心が強いといわれる。

   ITMAアジアで新機種や省エネ機が話題になれば需要喚起の引金に!!

  となると日欧中三つ巴も、これら種々の条件次第で勝ち組、負け組みがハッキリしてくるということか。中国はともかく、再編成が終わった欧州グループは意外に手強いと思うよ。日本は長年のデフレ不況で体質が弱化している。再編を進めてきたのは豊田だけといわれ、グループあるいは系列していた紡績の前紡機械メーカーを次々と分離、代りに織機の強化に集中させ、皮切りとしてニッサンWJLの買収と河本など織布準備機の集約グループ化を果たした。これが数年前の中国向けAJL大量輸出の成約につながったといわれている。

  日本国内の紡績企業はここ10数年、綿紡で5分の1、毛紡で4分の1まで稼働錘数が減少した。とくに綿紡は高級差別化されて現在ではわずか180万錘。中国の約3,000万錘とは比べようもない。毛紡も一部は中国での現地進出工場への投資が増えるにつれ、その分以上に国内稼働錘数が減っている。

  合繊各メーカーもそれぞれ減産につぐ減産を実施してきたが、カネボウに象徴されるように、生産中止や撤退がここ数年来特に目立っている。帝人松山の北工場がサラ地に、東レや帝人の愛媛ポリわたの生産は半分以下、日本エステルも減産のうえ半分近くをノンウーブン向けあるいはフィラメントなどはスパンボンドなどに転化させている。要するに衣料用から産資向けへの切り替えがうまく果たしたところが今生き残っているという。それでも次から次へと新素材、新製品開発を怠れば、産資用でも、台頭しつつある中国に、たちまちコストや市場で追いつかれ追い越されるとの危機感は常に頭から離れないと各社の担当者は口を揃えて云う。

  今年10月に第2回ITMAアジア・シンガポールが開かれる。4年前はOTEMAS直後、しかも欧州と日本側が開催のキャスティングボード争いでいささか軋轢があり、またその2年後のITMAバーミンガムでは欧州有力グループが出展申込みをしながら急遽取りやめたのを機に豊田など大手も出展を辞退した。(これらの出展申込み料金の払い戻しを巡り、英側の日と欧に対する不当かつ差別的な取り扱い方で、法的措置まで求められる場面もあった)
 その後、日繊協の当時の村田会長が欧州に飛んで、OTEMASとITMAアジアをジョイント開催することでようやく治まった。

  出展は機種別にホールに集約させるより、中国の北京展のように国別地域別に紡糸から染色仕上機まで工程が分かるようにすれば、その国の機械精度や技術レベルが分かってむしろユーザーの目を引いて商談に有効かも知れない。これからは米国内の繊維製造の経営形態のように、原糸の生産から織物ニット、染色仕上げを経て縫製そして製品納入までの一貫工程を保有するか支配する時代である。このことから、日本製で川上から川中、川下へとすべて例えば大手商社でまとめて商談でき信用・保証も一括して行える。これが欧州や中国だと業種・機種ごとに出展企業とネゴや駆け引き、契約上の複雑な取引きなど、クライアントに煩雑で余計なワークと時間と苦痛を与えることになる。

  アセアン諸国をはじめ途上国の繊維生産形態は、川上・川中・川下とそれぞれ断絶して、その間を卸屋とか小商社員あるいは仲買人・ブローカーなどが暗躍してきた。糸商を営む傍ら、下請けの零細機屋やニッターに仕事と金融の表と裏の使い分けする華僑系の商人が多いといわれてきた。
 しかしビジネスの国際化・ボーダレスしかも大型プラント導入傾向が一段と進むにつれ、また大手中堅のコンバータ機能を持つ商社が川上から川下まで責任をもって製品を出荷する物流近代化システムが構築されつつあり、加工設備も工程途中で滞貨しない合理的配分で投資を行うように改善されてきた。特に新しい分野、例えばタイでのカーシート向けでは現地の東レや帝人が最終製品までの生産と品質管理を行い納品するシステムによって日本車の現地組立工場に納入されている(製品の一部は欧米にも輸出されている)

  1997年のアジア金融危機以降、2000年の米のIT不況と日本のデフレ不況を経て、さらに中国繊維工業の急速な台頭などで、印パやアセアン、さらにトルコや綿産国のウズベキスタンでも「オールイン・ワン・システム」(麻雀用語でいう一気通貫)の導入が増えているとし、こうしたトレンドはしばらく世界に拡がっていくともいわれる。

  となると日本の場合、紡糸から染色仕上げまでの機械や部用品メーカーを含めて、タテヨコとの間で(インターネットなどを駆使してでも)情報交換を頻繁にして交流を図っていくことも大切だ。これまで日本では大手商社がアレンジしてきたが、これに加え日繊協や関繊・東海両工業会の会員間の調整、さらに商社とのつなぎ役としての役割も大事な仕事になる。まとめ役としての機能をうまく発揮できれば、脱会していった会員や新たに参加したいメーカーや取扱い商社が加入してくるかもね。

  いずれにしても、日本はリストラがほぼ一段落、欧州は英独仏スイスでの再編成(系列またはグループ化)伊とスペインの淘汰と集約の途上と、ここ1年は景気の上下変動はあっても、当業界でのドラマチックな変動はまずないとみてよい(対中輸出を中心とする中小機器メーカーは撤退または閉鎖あるいはM&Aなどは多少みられるだろうが)。
 それよりも、ITMAアジア後にどうなるか−−の方に気が移ってしまうよ。4年前は『スパンデックス使い』今年は『コンパクトヤーン』と、合繊から綿を中心とした天然繊維あるいはコンビネーション・複合系へと消費者のニーズも、特に日欧米そして中国の高所得者層の嗜好が高級かつ多様化の傾向を強めつつあることが、日欧による繊維関連団体の調査でも明らかになっている。日本やEUでは活発なリストラによって一時期、中間所得層が減少したといわれたが、昨年あたりから中国向けや石油・鉄鋼など基礎素材、そして何より自動車工業の活発な投資によって、所得水準が昨年から上向いていることも、繊維の高級・多様化指向を後押ししている。

  これはあくまで私の感覚だが、−−(それでも世界の繊維製品の消費傾向・流行を少しは調べてみた結果だが)今年の春夏物衣料は綿ウールとも色調が鮮やかな超薄地ものが大いに普及すると思う。米の権威ある研究所の発表では「ペルー沖でのエルニーニョ現象が徐々に拡大しつつあり、地球の平均気温は観測史上最大の上昇を記録するかも知れない」と予測している。
 流れはコンパクトヤーンなど高級番手使いの一方で、庶民は再びTシャツに綿の短パンが流行するかも知れない。化繊ではナイロン66や吸湿性ポリエステルなどのファインデニール使い、あるいはポリ長ジョーゼットとかトリアセテートのブラウスも復活を果たすかも。このことは、とりもなおさず世界景気が落ち込まないまでも、先進諸国では0.5〜2.0%程度の低水準でダラダラと推移する公算が強いことを示唆しているのかも知れない。

  もし君の予想が当るとすれば、繊維機械はリバイバル物、オールドタイプの改良型が活躍しそうだな。例えばコンパクトヤーンといっても、在来のリング精紡機を改造(ドラフトパート、ダブルリング、小コップ巻量)で生産が可能だし、日本でしか操業していないピン式仮撚機も味のある加工糸が出来るとして、いまなお残存稼動利益を保持している。欧州では未だにレピアやスルーザー織機がAJLを抑えて主流をなしている。高級多様化の対応機として根強い需要があるからだが、中国やアジアNIESがAJLやWJLなど超高速大量生産機が中心なのに対し、かつての繊維先進国がトラジショナル機をベースとした改良型に固執しているのが対称的で、ちょっと奇妙な現象といえるかもしれない。

  ITMAアジア展では、まさか「昔の名前、いや昔の機械にITを加えて、出ています」とはいかないだろう。かといって超々革新機や奇をてらった糸加工機などでは研究開発はしていても出展することもないだろう。ただオープンエンド糸のロータ空紡機やエアジェット精紡機(結束紡)の改良進化型、またニットでは島精機の無縫製横編機のように、特に丸編機の電子柄出し装置や変り編の出現に期待している。それと紡績であれ織布であれ染色であれ、これら準備工程が例えばコンピュータ制御で作業が容易になったとはいえ、精紡や自動ワインダ、織機やニットあるいはプリンタ本体に比べ、これらの前後の機器装置あるいはその合理的システムの開発または構築が少なからず遅れているように思う(個々の具体的指摘は後日にゆずる)

  紡績であれ織布であれ、一連の工程をシステム化し、同時に高レベルの生産・品質管理を含めてトータルでコントロールできれば、前段で云った「日欧中の三つ巴の市場争奪戦」も、日本が一歩脱け出すことができるのではないのか。昔の諺にあるように"三人旅の一人貧乏"にならぬためには、更なる技術開発とたゆまぬコストダウン(織機の労働生産性は他の一般機械に比べて低い。型式や部品の多様性によりまた受注ロットにバラツキがあってライン化しにくいことは確か。
いっそ主要部や電装・制御関係は日本で、部品はインターネットで世界から、組み立ては中国でといった動きも出てきてもおかしくない)が、生き残りのカギを握ることになると考えている。

  前後2回にわたり「今年の繊機の市場・需要予測」を展望してきたが、正直いって"ジリ貧傾向"を日欧メーカー各社とも覚悟しているのではないか。もちろん需要のカギを握るのは中印トルコの3カ国の動静、続いてパキ、ネシア、メキシコ、ブラジルの4カ国、合繊では(衣料・産資用共に)ロシアとウクライナに加えてハンガリー、クロアチア、ユーゴ連合。イスラム圏ではマレーシア、ウズベキスタン、エジプト、アルジェリアの紡織設備近代化需要が、中東問題(イラク、パレスチナあるいはイラン核疑惑など)が治まれば、いっきにに中国製にとって代る(人民元の大幅切上げと消費国の輸入関税大幅切上げと数量規制などが実施されればの話)可能性もある。

  1980年代後半は経済では日本の一人勝ち、90年代から21世紀にかけては軍備や穀物での米国、そして繊維や雑貨、家電などでの中国の一人勝ちが目立つ。せめて日本の繊維機械も、目下の三つ巴から抜け出して10年後には総合得点でダントツといった目標を掲げてみてはどうか。


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