2005.6号

<機種別による市場分析について>


 輸出総額の46.5%を占める中国は、合繊設備(DTYを含む)紡績糸向け自動ワインダ、それにWJLとAJLといった超高速革新織機、更に丸編・横編といったニット機械の4機種で全体の90%近くを占める。合繊設備は輸入規制で腰折れとなったが、DTYがこれらをカバーした。合繊関連と各種ニット機はそれぞれ似た金額(各148億円)で、織機は339億円、ワインダや撚糸機など準備機も織機に迫る約330億円に達し、ジェットルームと肩を並べるまでになった。染色・仕上機は2年前までは年々100億円余を続けてきたが、'04年はコピー機の出回り、欧州の巻き返しにあってダウンした。それでも合繊織物や糸染機のコンピュータ制御方式に支えられて約70億円と頑張っている。


 韓台両国とも主要6機種(化合繊・紡機・準備機・ニット機械・染色仕上)それぞれの構成比が似通っていることに気づいた。両国とも対中投資が活発だが、韓国向けは軟調腰折れし(総額約59億円)台湾も同様で(約84億円)かつてのバブル期からは考えられない程の低迷振り。むしろタイ向けワインダ、織機、ニット機、染色機など幅広い機種の導入(計88億円)で韓台を追い越し、印パやネシアの似た機種の構成(自動ワインダ、ジェットルーム、ニット機で大半を占め、それぞれ106億円、181億円、ネシア59億円)で、しかも長繊維の設備から綿などスパン糸の拡充をはかりつつあることは、これら機種の導入ぶりからうかがえる。その他トルコ向け自動ワインダとニット機、同様に伊や米の横編機を中心としたニット機、地域や国によって機種の需要色分けマップが出来上がるのではないか。


 ジェットルームは統計表にはAJLとWJLの区分はされていない。10年前のポリ長ブーム時まではWJLが約65%を占めていた。韓台それに中国、ネシア、タイなどが活発に導入していた。これらを狙って韓国と中国が性能は劣るものの安いWJLが出回り始めた。しかしアセアン諸国や韓台は早くからツダコマ、ニッサン(6年前に豊田が買収)の市場、そして中国も依然日本製で90%以上を占める。
 AJLは性能アップ、コストダウンがほぼ確立されつつあり、主要メーカーは世界で3社(ベルギー・ピカノール)で年間15,000〜18,000台を市場に供給している。日本2社の両機種の年間生産額は年によって増減はあるものの、平均して400〜450億円。ピカノールはレピア織機が主力といわれ、AJLは年400〜550台程度。それもスパン糸よりナイロンなどフィラメント織物が大半を占める。従って日本2社が、ことAJLに関して世界市場を席巻しているといえそうだが、目下のところ中印パ3カ国で80%余を占める状況にあり、これら市場以外へのプロモートを強化する要ありだが、例えば整経・糊付けなど準備関連の技術レベル、AJLにコンピュータ制御が必要かどうか。中国で100万円以内で買えるレピア機、敷糸交換や調整の面倒さなどを考えるとき、むしろ高生産性を訴えるほか、一方でジーンズやタオルやドビー・多色向けでアジア以外の国々(例えばトルコ、南ア、メキシコ、ブラジル、スロベニア等々の国々)への展開も考えてよいのではないか。


 以上、各機種の輸出市場を眺めてくると、大体次のよう結論づけられる。

 @合繊機はアジア地域(トルコを含む)に限られる。
 A紡機も同様にアジア地域が突出、ただ村田ジェットスピニングや豊田粗紡機など特殊あるいは優れた機械は欧米にも売れることが証明されている。
 B準備機特に自動ワインダは、売上げの65%前後が中国向けだが、印パ両国で30%、残り5〜8%はトルコや欧米、韓台、タイやネシア、エジプトなどほぼ総花的に出荷されている。自動ワインダはエアスプライサによる無結糸が織布業界で標準化してきたことで、3大メーカー(村田、シュラフォルスト、サビオ)の三つ巴でシェア争いを続けている。需要はアジアを中心に根強い。今後保守・サービス・価格以外に、いかにプラスアルファを加えられるかが課題。
 CAJL、WJLは中国香港だけで全輸出の70%近くを占める。残る30%弱が印パ。韓台タイ、ネシアは依然WJLが大半。トルコ、エジプト、インドなどで相当台数稼働しているスルザー織機にAJLが喰い込めるのかどうか。特に今後デニム製織や超幅広、ドビー仕様などで巻き返せるかが欧米あるいはその周辺国に浸透させていく誘い水になるかもしれない。
 Dニット機は大別してタテ、ヨコ、丸編の三つに分類されるが、島精機が2年前に開発完成した無縫製のセーター、ワンピース、カーディガン、タイツなど向け全自動横編機によって、更に市場を拡げつつある。これまでも香港経由中国、伊、トルコの3地域で全輸出高の約80%を占めてきたが、米や韓、タイ、更にインド、台湾、マレーシアなどが上積みされつつある。今後英仏、オランダなどEU、メキシコやブラジルなど中南米にも中高級機が増えていくことになろう。'05年400億円に迫るか。
 丸編機もダブル、シングルジャージ機(コンピュータ柄出し機構付)などを中心に香港・中国向けが突出している。米やトルコがこれに続くが、香中に比し一桁少ない。いま台湾製の丸編機が以前に日本にも輸出されていたが、中国が欧州メーカーと組んで攻勢に転じる(特に北京オリンピックに向けて)機を狙っている。福原精機もアジアや米(モナークと提携していた)では知られているが、ハイゲージ・多口数給糸・細目柄など高度な精度性能機の確立と拡大がグローバル化へのカギとなろう。
 タテ編機はトリコット、ラッセルに大別され、目下は後者が主流。毛布やカーシート、レース、産資向けなど用途は広い。今後中国向けで上積みか。
 E染色・仕上機も中国向けがダントツだが、多分カーシート向け糸染機と思われるタイ向けが続いたものの、それでも中国の6分の1程度。昨年央から仕上整理などの後工程機の輸出が目立って減ってきた。中台での安いコピー機が出回り始めたのかも知れない。世界でも最高水準にある日本の染色技術、ドイツやオランダ、スイスの高性能機械。友禅など手捺染や微細なフラットスクリーン捺染のソフトをコンピュータに覚えさせて機械で再現できれば(アニメのようなCD程度ではダメ)裾野は広がる。但し欧州の機械メーカー、パソコンプリンターのジェットやレーザインク、染料のカプセル代など多業種、更に研究所や学者の協力も必要となろう。すでに乗用車などの塗装や樹脂コーティング、ディッピング塗料の開発は数10、数100社の協力なくしては現在に至らなかったものだからだ。しかし、とりあえずは「省エネ、省資源、環境汚染の防止」対策が急務かも知れない。