繊 維 機 械 情 報 2003.0708号>


OUT LOOK ― アジア市場動向

 

 

 良きにつけ悪しきにつけ「中国市場」が繊維や機械プラントの浮沈のカギを握る。

 

このことは、さきごろ政府から発刊された“通商白書”でも、アジアの活力をテコに日本

 

経済をいかに再活性化するかに力点を置いている。

 

 

 中国の安い繊維製品の輸出も、そろそろ限界に達しつつある。デフレの日本、失業

 

率が10年ぶりに高くなった米国。それでも中国側は強気で、合繊ではポリエス長繊維中心

 

3年間で年産200万トン前後の新増設を、綿・混紡糸など紡績設備では新設・更新を含

 

め毎年500万錘を見込んでいるという。13億人の国内需要があるといえ、人口の80%以上

 

の農業従事家族に、年々810%増の需要は期待薄。当然ながら早晩設備・生産過剰となる

 

こと必然。となれば繊維はもとより、家電や雑貨、他の工業製品ともども、国内デフレを

 

克服するための“飢餓輸出”に走らざるを得ない。

 

 

 しかしてこんどは中国が世界にデフレを蔓延させることになりかねない。2008年の

 

北京オリンピックまで78%のGDP成長を保てるかどうかにかかっている。

 

 

 韓国、台湾の繊維工業は紡績がたどった道を歩みかねないとして、合繊は目下、サ

 

バイバルへのリストラ、量より質あるいはタイヤコードやエアバッグ、カーシートなど産

 

資用、スパンデックス糸や高級不織布といった比較的高付加価値への転換を図っている。

 

もちろん日本はさらに一歩先んじてはいるが、世界的シェアを保ち得そうなのは炭素繊維、

 

ポリエスタイヤコードと絶縁プリント基盤フィルムぐらい。産資でもレギュラータイプ程

 

度なら、間もなく韓台、やがて中国に追いつかれる。

 

 

 97年のアジア金融危機を脱し、欧米中の消費好調に支えられ、為替レートの割安感

 

もあって、再び外資を取り込んできたタイやネシア、マレーシアが比較的元気。まだテロ

 

や政情不安などが残るものの、日本や韓台が広範な産業に投資をしはじめた。中国への一

 

局集中を避ける意味もある。

 

 

 日本企業と違って、かれらは少々のカントリーリスクもいとわず、米資本と同様参

 

入決定も早い。ただいざとなれば逃げ足も早いが、ドルやユーロ高の間はローリスク・ハ

 

イリターンだとかれらは云う。

 

 

以上