ことしのキーワード

変化 変革 変調 変貌 変更 変遷 変移 変動 変換 変異
変説 変形 変幻 変則 変成 変位 変圧 変速 変種 変態
変容 変装 変曲 変量 変約 変心 
変名 変身 変死 変災

  「変」を辞書で引くと、あとに続く述語として上に掲げたものを含め30余語が載っていた。「変」があとにつくものには"大変""異変"といった身体や自然、経済など、あらゆる事象が"急変"する時に使われる。
 米大統領予備選でも、民主党有力候補がそろって「change変化」を絶叫していたが、何をどう変えるのか具体的に説明せず、ただスローガンとして繰り返すのみ。むしろgをcに入れ替えて「chance」につなげればと思う。
 子年の今年は十二支の初めの歳である。昨年は「亥年」で大波乱が見られた。政治・為替・株式・金融そして国際問題といったところに変化変動が生じた。今年もこれらの"揺れ戻しと後遺症"が続くと憂慮されている。これら懸念・問題の解消に向けて先手を打っていくのが政治の役目だが、今の政官財界共に成り行きを心配して、打開の道を拓こうという意思が見えてこないのが残念。

  昨年から今年にかけて各国で注目される選挙があった。わが国も参院選挙で与野党が逆転したが、仏、豪、韓でも大統領や首相がチェンジした。今年も米ロの2大国で新人が登場するが、誰が選出されようと、いずれ対中印そして中東政策を巡って、目下の政権以上に対立が深まって行きそう。さてその時日本の外交は相変わらず中国に気兼ねしながら米にべったりの政策をとれるかどうか。

  この11月には女性大統領が初めて誕生すると世界の大半は予想し、すでに駐米公館筋はそれぞれのチャンネルを使って政策やスタッフ等の情報を探っている。16年前のクリントン・コピーを想定すれば、おそらく日本はMr.C氏以上に「バッシングからパッシング、さらにナッシング」という悲劇も覚悟しておく要がありそうだ。となると現下の日本政府の内政外交では行き詰ること必至。たとえ衆院選挙の結果、政権に自民あるいは民主の誰が就こうと日本離れは止まらないだろう。

  これまで日本は東西巨大国におもんばかってきたが、そろそろ南北に軸足を置くことを考えてもいいのではないか。北といえばロシアしかない。南はアセアンとインドだが、北には石油とガス、南はブルネイのガス、ネシアのスマトラ北西からビルマ沖にかけて膨大なガス・石油が眠っているといわれる。中国はすでにこれら両国に首脳外交・援助を行っている。インドへは売るものは盛り沢山だが、彼国からは買うものが少な過ぎる。悪い冗談だが、米がアテにならないとなればインドからミサイルと原爆の購入予約をしておいては。何せ米がインドの原爆を認め核燃料の援助まで約束したというのだから。ついでに悪ノリすれば、北方4島のうち南側2島を年内にも返還させ(ロシアもすぐ承認するだろう)平和友好条約を締結する際に、4島周辺の漁場を認めさせる(漁獲量は日本側で規制)加えてサハリンのガスやシベリアの石油の対日輸出を求める。代わりに貨物船を売ると同時に函館港にロシアとの共用のコンテナヤードを設営する(ロ側は太平洋向けの貿易拠点という大きなメリットを得られる)―といえば日ロまとまるかも。
 まさに日付変更のない"経度から緯度線"へと、大胆な戦略転換が必要かも知れない。もはや"全方位外交"という冷戦終結直後にいわれたバカ外交は21世紀に入って通用しないことがハッキリした。ここでも世界の「変調」に対して「変更・変革」が進められないもどかしさが沸いてくる。中国史に出てくる"南船北馬"という軍事戦略上の譬えがある。両国それぞれが得意とする戦力移動手段だが、南の船を攻略するにはどうすればよいか、北の騎馬戦に対してどういった手段があるかの作戦を練ったという逸話である。今の政府には米中に気兼ねして到底こういった発想は出てこないだろうが。

  米発信の金融不安・株式下落が世界に波及した。もともとバンキング・クランチから引き起こったことだが、折からの原油高と相まって日米欧それに中印を含む世界の経済に打撃を与えたことは間違いない。果たして一時的なダウンサイジングで済むのか、あるいはグローバル・リセッションとなるのか、それこそが「神の見えざる手」にゆだねられることになる。昨年暮れにIMF世銀が予測・発表した'08年世界の成長率は3.3%(日本は1.8%)としたが、この情況では春ごろには下方修正せざるを得なくなろう。石油が50ドル台に下落すれば別だが―
 ことは石油だけではない。穀物そして金や鉄鋼、銅、アルミはもとより、各種レアメタル、それに見立たないようなウランにいたっては8倍に(3年前は8〜10ドル/ポンド当りだったものが、昨年秋には90ドル前後)急騰している。これら主要産品指数(R/J-CRBマーカンタイル相場による。1967年=100標準。'82年340、'99〜'01年平均200前後、そして'07年末350に達している)は過去5年間に1.5倍と、かつてない上昇ぶりだ。 

  日本は幸いにしてデフレと円安とリストラ、そのうえ海外にモノ・ヒト・カネを移転させることによって競争に耐えてきた。しかし米が腰折れ、中がこれに影響され下降することになれば、これら経済大国に支えられてきたインドやアセアン、中南米など、いわゆるエマージング諸国がモロに影響を受ける。わが国内でいえば、大手企業の売上・利益が減少すると中小メーカーが弱体化し整理淘汰されるようなものである。
 では日本としてどんな手を打てばよいか。世界に通用する新製品の開発かアニメのようなソフトを内外に送り出すしかない。これまでのケイタイ、デジカメ、薄型テレビも、やがてはICメモリーやモータバイクのように新興工業国へと移っていく。次世代新開発のモノポリ製品が出現するまでの数年間は、政府が今やろうとしている施策の逆のこと、すなわち減税(住宅、ガソリン、医療、一般所得など)最低賃金の引き上げと法人税率の引き下げ分を賃金等に回すなど、思い切った内需・消費拡大を目指すべきだ。
 当然ながら歳入不足に陥るが、その分は赤字国債の発行(金融・証券はもとより、一定額を超えた高額所得者個人にも戦時国債のように強制購入させ、もちろん国会議員も高級官僚も義務を免れない。売れ残れば日銀が引き受ければよい。目下は低金利時代なので償還は楽)埋め合わせすればよいことだ。なにぶん緊急事態なのだ。これで福田内閣は生き延びるし、たとえ解散しても自公で過半数を占めることができよう。"角をためて牛を殺す"ことのないよう願いたいものだ。


パラドックス的発想・夢物語を2ツばかり。

 <その1>  洞爺湖サミットで「地球温暖化」をメインテーマにあげている。二酸化炭素の削減・数値目標のほか、原油高や国際金融システムなどが議題にのぼるだろうが、首脳8人のうち日米伊はレイムダック状態だし、ロシアはプーチン首相か新大統領か分からない。仏は中道右派だが、豪とカナダは左寄りだ。議長国は日本だが、全体をまとめきれず、影で主導権を握るのは恐らく英と独だろう。
 そこでパラドックス的緊急会議として「酸素と水」を採り上げてはどうか。近い将来必ず不足するものとして京都第2議定書をまとめようと呼びかけてはどうか。
 水不足は中印大陸だけに限らず、中央アジアやアフリカも、また豪大陸でも2年続いての干ばつに悩まされた。いまひとつ酸素をどう維持するかだ。人間や動物、魚・貝類の殆どが酸素なしでは生き残れない。光合成によって植物や藻類が再生産するとされるが、森林伐採と焼畑で二酸化炭素が倍加する。加えて砂漠化する一方で、製鉄、アルミ、チタンなどや自動車、船舶、石炭やオイルや木材、さらにゴミ焼却に至るまで全て酸素の助けが必要。さらに温暖化で海や湖の水温が上昇すればアオコなど藻が増え、酸素を奪って魚貝を死滅させる。目下のところ人工的に酸素を取り出す方法は、水をイオン化分離すれば水素(水素燃料自動車の開発が急がれるが、これも酸素との結合による)が発生・生産が出来るものの、それには膨大なエネが必要である。人口が増え、食糧や鉱工業等の産品が、また道路やビルが建設されることで鉄やセメントが使用され、コークスやガスが消費される。人やモノが動けば酸素が減り、二酸化炭素が増える。
 日本では「少子化だ、将来の労働力だ、年金負担が"大変"だ」と騒いでいる。食糧自給率50%以下、資源が乏しく地震や火事や事故の多い島国で、"逆説"的にいえば少子化こそが民族の持続と生き残りのための知恵と工夫を生じせしめることになる。古代のギリシャ、現代のルクセンブルグやシンガポールのように―

 <その2> M&Aがあまり騒がれなくなったと思ったら米のサブプライム問題が金融・証券界を揺るがせた。そして一般の目に浮上して注目されたのが「政府系ファンド」である。中東系やシンガポールが以前から知られていたが、昨年に中国もファンドを立ち上げたとされ(総額2,500〜3,000億人民元、平均約340億ドルといわれる)今後どの国の分野、金融か証券か、原油や穀物や金属など物品相場に参入か、それとも不動産リート、あるいはM&Aに参入かなど、いろいろ取り沙汰されている。
 日本にも当然ながら(第三者機関を通じて)巨大資金の一部がやってくるだろう。金利の低い国債、それにリスキーな不動産に魅力はなく、向うとすれば大手か中堅企業への投資か買収だろう。当然ながら先端技術を持つ会社への株式に投資する。発電か省エネ装置、化学、医療品あるいはバイオ、そしてIT・通信・映像機器関連など、中国にとって涎がでるほど欲しい技術や製造ノウハウを有する会社が一番欲しいところだろう。しかし日本でのM&Aは米系ファンドと企業側防衛策とのあつれき、そしてその結果を見れば容易でないことが分かる。それでも中国のことだ。狙いを定めれば政治問題化してでもやるだろう。役人や証券マンあるいは一般市民は「新幹線車輌や交通システム」「精密工作機械」「最新医療機器や医薬品」「アルミやチタン、シリコンウェファの生産と省エネノウハウ」それとも造船大国を目指しての「LNG輸送船」などを挙げるだろう。
 だが小紙なら、あえて「東芝の原子力発電プラント」を狙う。東芝は米ウェスティングハウス(WH)を買収した英BNFL(核燃料会社)が経営悪化で売り出し、米GEやエンジニア企業、三菱重工と競って約6,000億円で入手した。東芝はすでに沸騰水型(BWR)の実績を持つが、世界の趨勢である加圧水型(PWR)はどうしても欲しかったプラントだ。日本では日立・三菱と併せてBWR29基、PWR23基が設置されているが、中国では先にWHと三菱が共同で受注した(PWR)4基を建設中だ。これは仏アレバ(両タイプを持つ)と競争して落札したもの。
 中国の原発はたった7基(PWR)が稼働中、建設中は6基、計画は2020年までに30基、30年までに合計54基に伸ばすとしている。世界で一番保有するのは当然に米の103基だが、中国は仏や日を20年後に追い越すというのだ。従って米GEと仏アレバ、そして東芝・三菱・日立の対中売り込みは激化すると思われるが、中国は一方で裏に回って、これらメーカーのうちどこかに対して買収を仕掛けてくると考えられる。もちろん政府系ファンドを使ってのことだ。なん10基の原子炉や発電プラントを国際入札で買うこともないし、大型商談にはほぼ100%汚職がつきものだ。すでに豪や南アフリカのウラン鉱入札や鉱石輸入、濃縮プラントにおいてもクサイ噂が飛び交っている有様だからだ。自企業製の導入なら、その心配はない。
 中国が仏アレバを買収するのは不可能だ。政府資金が入っている国策会社だから。米GEも相手が巨大過ぎて荷が重い。残るは日本3社のうちだが、小生が狙うなら両タイプを持つ東芝だ。幸か不幸か株式相場は低迷している。まず19%の株式を入手したうえ、交渉で原発部門を分離独立させたうえ大型増資を引き受ける。しかし中国側で全面買収は出来ない。なぜならインドや南米、アフリカ、アセアン諸国等に進出する際、中国企業では困るからだ。

 (追記) 以上が私のみた「悪い初夢」です。 しかし日本の政府も野党も役人も、そして経財界人も昨今とくに"パラドックス的説明"が多過ぎはしませんか。
 フランスの小噺に「ナポレオンが夫人に云った。世界の3大嘘とはなんだと思う。第1は女性のウソ、2ッ目は政治家のウソ、3ッ目はあらゆる統計・情報にウソがある」と。これからはこれらのウソを見抜く分析と経験が必要と思われる。企業のバランス報告書も4番目のウソに入らぬよう、今年も頑張って下さい。

以上