2006.10号

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 繊機生産出荷高、対前年比10〜13%増2,000億円超えか

――中国向け回復、印パ両国の積極導入目立つ、円安も追い風――

中国の繊機需要動向及び中国と対抗する繊維生産大国であるインド、パキスタンの状況に触れてみる。というのも、今年4月初めに「日繊協」でまとめた'5年1〜12月暦年の生産・輸出入(国別・機種別)統計によると、数年ぶりで生産出荷額が2,000億円を割って1,800億円台に落ち込んだ数字となっていた。そこで弊紙(5月掲載)では今年の需要見通しも「2,000億円割れは必死」との予想記事を掲載した。
 ところが最新の生産・輸出・受注統計(1〜7月)によると生産は1,170億円を超え(対前年同期比120.4%)、輸出は1,577億円(同114.7%)また近々の受注残高も昨年同期比で136%と4割も増えている。 今春、日繊協総会で津田駒の菱沼社長がいみじくも云ったと後日聞き及んだ。「一昨春から昨秋ごろまで中国をはじめアジア諸国からの織機受注が徐々に落ち込みはじめていた。原因は米国の住宅不動産やIT関連産業などの落ち込み、原油の高騰でインフレを警戒したFRBが徐々に公定金利を引上げ米景気が失速するのではとの予想から、繊維輸出国が設備導入を手控えるようになったことが影響した。こうした現実を踏まえて、当社もアセンブリラインなど生産設備の一部の縮小、従業員の配置換えやカットを受注状況に合わせてダウンサイジングした。ところが昨晩秋から今早春にかけ中国やインド、ベトナムなどから続々注文が舞込み、連日残業しているものの受注に生産が追付かず、あっという間に納期が延びてしまった。」
「うれしい悲鳴と云いたいところだが、需要予測を誤ったことも確かだ。織機をはじめ繊機全般に云えることだが、殆どが受注生産でヒマになったからといってフレームや共通部品は別として大半は見込み生産というわけにいかない。21世紀に入って国際資本の自由・流動化で、輸出メーカーにとって、為替変動や高騰した原材料調達などにも目配りしていかねばならず、経営者にとっては情勢判断と対策をどうとるかについて厳しい時代が続くのではと自戒していると」と。
 ところで、中国はその広大な国土に13億人が住み、繊維だって国営と民間、さらに半官半民もあれば外資系これとの合弁会社、さらに最近続々発生している事例だが、国営・民間がダミー会社を作って資金や機械を取込んだうえ計画倒産させたり逃亡する(役人と共謀、あるいは銀行の融資確約書を偽造する等々もある)悪人どもも混じっている。第三者機関や取引銀行に信用調査を依頼することもリスクが伴う。調査の委託先をまず信用調査しなければ―といった笑えない冗談もささやかれている始末だ。もうひとつ、「日中首脳会談」で“戦略的互恵関係”という怪しげな文言で締めくくっているが(かつて“社会主義市場経済”といったワケの分らない標語もあったが―)このことはまさに“同床異夢“とも云える苦肉の官製造語と云えなくもない。商売取引ならこんな約束や契約はしないだろう。インド、アラビアそして中国との商売には、特に落し穴があることが多い。

以上