2004.7号
Interpretative INFORMATION
「中国特需」で軒並み増収増益
繊維機械大手の決算
リストラとの相乗効果
今期見通し=上半期は受注残の消化、下期は失速・原材料高
「3社の事業部門を合併して2年余り。前3月期は予想通り20%増の売上300億円超え、今期は370億円と、円高にもかかわらずクリアできた。中国特需、かの国から黄砂ならぬ好況の嵐が吹いてきた」と3月初旬語ったのはTMTマシナリー(東レエンジ、帝人製機テキスタイルマシナリー、村田機械の各合繊機械部門を統合した合併会社)の兼松社長。しかし’04年度の見通しを尋ねると「う〜ん、受注残は1年分あるものの、新規引合いは半減、成約はそのまた半分ぐらいではないかと予想している」と。売上の60%余が中国向けの同社にとってまさに死活問題。目下、国内合繊各社の再リストラ、例えばテキスタイルから産資向け転換や新繊維の開発実用設備向けなどに力を入れるとともに、中国進出と自国の生産品種転換を目指す韓国や台湾へ売り込み攻勢をかけるべく機構・人事の改革も行っている。
中国向けで落ち込みが目立つのはWJLやAJLの織機メーカー。豊田、津田駒もご多分に漏れず織機を中心に中国向けでは大いに潤い、繊維機械部門では増収増益となったものの(津田駒は11月決算)、今年以降は中国や韓国の安価なWJLやレピア機が伸びていることから両社では機種の差別化、例えばジーンズ、超広幅、高級タオル、ガラス繊維向けのほか、ドビーやジャカード搭載の高級柄物用のAJLでの勝負の年になると意気込んでいる。両社とも年300億前後の売上げだが、今後は台数ではなく、追随できないハイテク機で高級・差別化を狙う必要に迫られよう。というのも、鉄アルミの原材料の高騰、加えてジリ高の円と、いずれ切り上る人民元とのハザマが、これからの競争力を削ぐことにつながるからだ。
島精機の横編機、福原精機の丸編機も同じことが云えそうだ。周知のように島は無縫製機の受注残を1年以上抱えているものの、需要拡大には高速化とコストダウンがいぜんネックとなっている。仕掛糸の自由転換や模様柄の即時変換など宿題もユーザーから与えられている。
中国市場の動静が日本メーカーに、これほどの影響を与えたことはかつてなかったことだ。1970年代前半の東南ア地域での綿紡織、韓台両国での合繊勃興期以上に中国のダイナミックな発展ぶりに圧倒されたものの、さてこの国がソフトランディングで北京オリンピックまで持続させることが出来るのか、それともハードな引締めや設備規制によって"角をためて牛を殺す"ことになるのか、明春にかけて情勢分析が必要となってこよう。米国の対中貿易不均衡が繊維製品の輸入規制にまで(あるいは人民元切上げも含めて)踏み込むのか。これらの状況によっては、日本の中国現地工場や合弁進出、OEM生産工場も含めて直接・間接的に設備投資動向に響いてくることになり、まさに日欧の繊機業界にとっても気にかかるところだろう。