<INFORMATION>

2003.10〜11号

(国内)

中国元切り上げ予測で駆け込み投資急増か、三菱レなど

 韓国は米ドルとリンクしているが、中国元はドルとペグ制をとっているため、ドルが円やEuroに対して安くなれば元はさらに対外的には競争力を増す。ところが円高ドル安になっても、円は元に対してここ数年来ほぼ15円少々と変わらない。6年前の日本の金融危機の頃の対ドル円レート135円を越えたとき、中国は声を大にして円安是正を叫んでいたものだった。中国がWTOに加盟したときの円ドルは123〜127円だったが、同時多発テロ後にもかかわらず日米中3国とも原油価格は急騰したものの為替は落ち着いていた。その頃から、これまでの繊維や家電、雑貨類などの比較的労働集約産業から乗用車や建設・土木運輸、携帯電話やデジカメなど半導体関連のアセンブリまで現地進出していった。
 昨今の円高、しかも円安誘導介入で9月末までドル保有高は6,000億ドルを超えた(うち1,500億近くは米国債などで保有。従って、これを売ってイラク復興資金として拠出すれば為替はどうなるのか。その反応をみてみたいものだがーー)にもかかわらず、依然として対元は動かない。もし近い将来、元切り上げ必至と予想されれば、今のうちに円でドルを買ったうえ中国で投資をやれば、一石二鳥の利を得ることが可能。しかして日本の企業は直接あるいは間接(合併又は提携、住宅や車のローン資本など)投資は今駆け込みの最中というわけだ。
 繊維関連の現地進出はほぼ落ち着いたとみられていた。これまで紡績や合繊大手のほとんどは、旭化成のスパンデックス糸生産工場(蘇州)でほぼ一巡したと思っていたが、来年にも三菱レイヨンがスパンデックで中国進出を計画。続いて日清紡も紡織ではすでに果たしているが、新たにスパンデックスでも(米Du Pontや旭化成は世界の主流方式である生産性が高くて紡出が比較的やさしい乾式法が中国では100%)場合によっては融合法、すなわちモノフィラ糸で進出をねらっているのかも知れない。
 そのうちタイヤコード(NYまたはPET)ガラス繊維はもとより、場合によっては炭素繊維やケプラー、テクノーラといったガス焼鈍をともなう超強力糸のように欧米に限っていたものが、元切り上げ前にも思い切って進出するところも出てこよう。


繊機大手の上半期決算は軒並み黒字

 豊田、ツダコマ、村田機械、島精機、TMT(村田、帝人製機、東レエンジ3社の合併会社)など繊維機械大手の上半期決算(ツダコマ11月期、村田5月期)は軒並み当部門はわずかながら黒字決算となった。リストラと資材調達の合理化、そして何より中国を中心にアセアン諸国向け輸出が好調だったのが主な原因とされる。ただし従来の主力市場だった韓国や台湾、期待された印パやトルコ向けが、アフガンやイラクの影響もあってか不振だった。
 さて下半期そして通期の見通しはーー残念ながら、一部の業種機種を除いて売上は減少必死。下半期は世界景気の立ち直りが遅れていること、急激な円高、主要市場である中国の繊維設備投資がSARSの再燃を警戒して足踏み状態にあることなどから目下、受注は伸び悩んでいることから、各社とも下半期は多少の赤字を予想しているようだ。上半期は順調だったものの通期ではトントンないしは赤字になるところが過半を占めるとみられる。
 こうした情勢から、商社やメーカー担当者は、先のアセアン・バリ島会議で合意した「資本・貿易の拡大と自由化」(もちろん相互安全保障とテロ対策)を踏まえて、日本からの海外投資・工場進出が活発化するとみて、また折からの円高といった追風もあって、国内繊維はもとより、いま不振の韓国や台湾の企業にまで、彼等による海外投資の情報収集に動き回っている。



(海外)

韓国大手、欧州でスパンデックス生産進出へ

 韓国の暁星(Hyosong 旧東洋ポリエスタ)は今年5月、中国・上海の南西150kmの嘉興(ギアン)に大型スパンデックス生産工場(日産約4t、20〜140d糸)を立ち上げたが、同社は9月下旬、ドイツで記者会見し、欧州で同糸や製品の発売を開始するとともに、生産プラントの建設も検討しているとの発表を行った。進出する国や生産規模など具体的な内容は公表しなかったものの、現地の噂ではイタリアかスペインといった国の名があがっているという。
 Hyosongのスパンデックス拡大戦略が実現すれば、韓本国と中国、それに欧州の3拠点の合計生産量は、世界最大のDu Pont(東レデュポンを含む)に肩を並べることになるとしている。なお第3位は旭化成グループ(中国と台湾ナンヤン合弁工場と併せ)となっている。


台湾の中堅繊維、石川のピン仮機導入へ

 石川製作のマグネットスピンドル方式のDTY(通称ピン仮)3台を台湾の繊維中堅撚糸生産(企業名)不詳)から受注。石川のピン仮は192錘1台満管時にオート紙管チェンジの一斉玉揚げ方式。
 ピン仮は生産性が低く、90年代に入って次々と姿を消していき、代ってフリクションディスクやニップ(ベルト)方式が主流になった。しかし日本では、特にニット糸や一部織物用で高級感が出し易い加工糸としての需要があることから、日本国内に既設200台前後(改造・改良しやすい三菱2ヒータ台が中心)が稼動している。一方韓国や台湾では生産性の低いピン仮の大部分はフリクション式に入れ替えられ、ほぼ消えてしまったかに見えたが、その後40年央になって台湾の一部でピン仮揚りの加工糸需要が高級多様思考によって生き返ったものの、大きな流れとはならなかった。当時は苦肉の策として、例えばBarmag製の旧台をフリクションからピン式に改造するスロースター(仮撚業者)も出現したが、ガタがきて間もなく消えてしまった。石川のピン仮導入は恐らく、ピン仮加工糸の市場見直し、ポリエスPOYの下値カサ上げ、日本からの当加工糸への引き合い増加と台湾国内での一部商品化などによって、新台の導入を決めたのではと考えられる。