<番外>
米・中の景気動向が気にかかる日欧アセアン
「バッシング」世界は米国に、米は欧州と中国に、やがて日本にハネ返り?
「親亀こけたら皆こけた」というのは昔の漫談のオチだが、これを模して「米中こけたら世界はデフレ不況」というのがブラックジョーク。米は双子の赤字、そのうえ戦費は増える一方で世界でドルがダフついている。しかしドルは世界の機軸通貨であるかぎり赤字だろうがドル安だろうが気にしながらも札を印刷し続けるだろう。但しインフレが年率3.5%以上になりそうな統計が出てくれば大幅利上げ、ドル引締めに向うだろう。
中国はより深刻だ'04年のGDPは恐らく対前年比9.3%と依然高成長になるといわれる。金利引上げ、貸し出し引締めなんのそのといった勢いだ。成長の主因は消費13%増、固定資産(公共・不動産・設備投資など)は30%と、まるでかつての日本のバブル期以上だ(それでも日本はせいぜい6%台の成長率だった)。しかし一方で消費者物価は大都市部で10%前後、農村部や東北各省でも4%前後と抑えが効きにくくなっている。
'05年前半は米中両国とも「金融引締め」は続くとみられる。当然ながら設備投資は鈍り、雇用も減少し失業率はアップする。90年代の日本のように、デフレとリストラで失業者増加といった現象とは事情が異なる。中国の場合は公共投資によってある程度カバーできるが、日米では財政赤字が続き、安易に投入できない。
もちろん中国も財政は北京オリンピック整備や新幹線建設などの公共投資が増えているうえ、軍備の近代化に伴う軍事費が予想以上に膨張している。しかしそれ以上に危機が迫っているのが金融機関の不良債権問題である。主要16行が抱える不良債権は公表ベースでも約1兆7千億元(約22兆円)で比率は13%(日本のメガバンク平均4.1%)と公表されているが、外資関係者間では実体17%前後とみている。さきに国有中国銀行と中国建設銀行に450億ドル(4兆7千億円)もの公的資金を注入して不良債権を処理している。その手法はかつての日本の長銀や日債銀のスケールかそれ以上の規模で実施せざるを得なかったようである。
中国当局は'06年には全国で人民元建ての融資等を外資系に開放する。現地進出外国企業には朗報のように見えるが、金利レートや手数料等が不明では安易に喜べない。目下19カ国62の外資系銀行が進出中だが、すでに全外資貸出額の18%を占めるほどに成長している。このことは外国企業の中国への進出がより容易になることを示唆するものだが、実は100%以上出資の外国現地企業の製品は中国内での販売を禁じている。現地合弁企業でも、生産された商品の大半は(減税優遇措置はあるものの)輸出を義務付けられている。巨大市場とはいえ外資系には不利な条件、種々の規制、リスクを背負いながら進出してきたものの、今後上記のような人民元貸し出しなどの緩和が実現するといっても、景気腰折れ生産過剰が心配されるこの時期では、よほど新しい製品、独占的市場が得られる商品のものでないかぎり、これから"新規参入"(流行語大賞の候補となった)するのは難しいのではないか。'03年の自動車販売は60%増、'04年は30%増とすでに半減している。
'03年は米の消費と住宅建設にIT関連の回復、中国の不動産と設備投資と自動車と通信機器などが景気の索引力だった。'05年は少なくとも前半は金利上昇、原油高などもあって、工業生産指数はマイナスで推移し、その間の在庫調整がスムーズに処理できれば、年後半には回復する−−というのが日米エコノミストのシナリオだ。
では日本はどうか。円高・原油高は一時ほど騒がれなくなったし、企業収益も中間決算をみるかぎり、収益の回復ぶりは目覚しい。しかし通期見通しでは軒並みに「前期・今上期に比べ下降する」との予測を打ち出している。
こと繊維機械業界にとっては、すでに対前年比30%前後の売上高ダウンの兆しが実現となりつつある。中国依存からいかに早く抜け出し、新規市場開拓とそれに合わせた製品開発、技術移転など総合的に判断し、早期に展開実行できるかどうかが、生き残れるかどうかの隘路が'04年〜'05年にかけての重大な時期といって過言ではない。